家づくりのご相談を受けていると、 「30坪くらいの家は狭いですよね?」という言葉をよく耳にします。 けれど実際には、同じ30坪でも“広く感じる家”と“狭く感じる家”があります。 この差を生むのは、坪数ではなく「空間の感じ方=体感」をどう設計するか、です。
■ 天井の高さと“視線の抜け”がポイント 人が「広い」と感じるのは、床面積よりも視界の広がりです。 例えば、リビングの一部だけ天井を高くしたり、 外へ視線が抜ける窓を設けるだけでも、 体感の広さは大きく変わります。 特に平屋の場合、 屋根形状を活かして勾配天井にすることで、 開放感をつくることができます。 窓も、ただ“採光のため”につけるのではなく、 「目線の抜け」を意識して配置することが大切です。 たとえば隣家の屋根越しに空が見える位置、 庭のグリーンが視界に入る角度。 それだけで日常の印象がぐっと明るくなります。![]()
■ 廊下を最小限に、空間を“つなげる” 間取りを考える際に意外と見落としがちなのが「廊下」。 廊下は通るための空間であり、 滞在のための空間ではありません。 そのため、廊下が長くなるほど “使えない面積” が増え、狭く感じる原因になります。 中村建築研究室では、 廊下をできるだけ最小化し、 空間をつなぐ設計を心がけています。 たとえばリビングと寝室の間を ウォークスルークローゼットでつなぐ、 LDKの一角にワークスペースを設けるなど。 「区切る」より「つなげる」ことで、 コンパクトでもゆとりある暮らしが生まれます。
■ 平屋こそ、“体感設計”が生きる 平屋はワンフロアで完結する分、 面積に限りが出やすい反面、 立体的な広がりを生かせる構成ができます。 屋根形状を工夫して天井の高さに変化をつけたり、 室内外をひと続きに感じさせるデッキ空間を設けたり。 壁を最小限にして空気と光が流れるように設計すると、 数字以上の広がりを感じられます。 中村建築研究室では、実際の坪数よりも 「暮らしたときにどう感じるか」を大切にしています。 小さくても広く感じる家は、 数字では測れない心地よさを生みます。
■ まとめ 「広く見せるテクニック」ではなく、 「心地よく感じる空間を設計すること」。 それが中村建築研究室の考える “体感のデザイン”です。 これから家づくりを考える方は、 ぜひ「坪数」ではなく、 その家でどんな空気を感じたいか、 どんな時間を過ごしたいかをイメージしてみてください。 そこに、本当に“広く感じる家”のヒントがあります。

