住宅の外観デザインは、家の印象を大きく左右するだけでなく、
住み心地・メンテナンス・耐久性・コストにも深く関わります。
SNSでは外観の写真が溢れていますが、
実際の設計では“見た目だけでは決まらない”部分が多く、
建築士が行う外観設計には明確なロジックがあります。
今回は、中村建築研究室が実務で大切にしている
**「外観デザインをつくる5つの視点」**を紹介します。
① シルエット(ボリューム)のバランスが外観の50%を決める
外観デザインは、色や素材の前に
建物の「形」=ボリュームでほぼ印象が決まります。
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屋根の“かけ方”(片流れ・切妻・寄棟・フラット)
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建物の“奥行きと高さ”のバランス
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下屋(1階部分の屋根)の出し方
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車庫やテラスのボリュームとの連動
これらが整っていると、
シンプルでも高級感がある外観に仕上がります。
逆に、ボリュームの整理ができていないと
どれだけ高価な素材を使っても“雑然とした外観”に見えてしまいます。
② 素材選びは「質感 × メンテナンス × 価格」の3軸で判断
人気のガルバリウムや塗り壁、サイディング等、選択肢は多いですが
外観の美しさとランニングコストに直結するため慎重に選びます。
例えば:
● ガルバリウム鋼板
・シャープな外観
・メンテコスト低
・単調にならないよう“貼り方向”が重要
● 塗り壁(モルタル+吹付)
・高級感が出る
・汚れは目立ちやすい
・軒の出が短いと劣化リスクUP
● サイディング
・コストを抑えながら豊富なデザイン
・目地の見せ方が外観印象を左右
素材の良し悪しではなく、
敷地環境(風向き・排気・日射)を踏まえ、長く美しさが保てる選択がポイントです。
③ 窓の“位置と大きさ”はデザインの決め手
外観で最も“素人目に差が出る”のが窓の配置です。
窓の高さ・幅・縦横比には美しい黄金比があり、建築士がもっともこだわる部分。
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縦長の窓でスッキリ見せる
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横長で伸びやかさを演出
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窓と壁の余白を整える
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必要以上に窓を増やさない(外観が騒がしくなる)
また、外観を優先しすぎて
室内が暗くなる/家具が置けなくなる/視線が気になる
ということが起きないよう、
外観と内観のバランスを同時に計算します。
④ 夜の外観“ナイトシーン”までデザインに含める
最近の住宅では、外構照明が外観の価値を大きく引き上げます。
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アプローチの間接照明
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外壁を照らすウォールライト
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玄関軒下のライン照明
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樹木へのライトアップ
昼の外観だけでなく、
夜に帰宅した時の“雰囲気”まで美しくなるように設計するのが現代的なデザインの考え方です。
⑤ 外観は“敷地条件の読み取り”で決まる
良い外観は、敷地を読み解くところから始まります。
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接道方向
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隣家の位置・高さ
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日射シミュレーション
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風の流れ
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近隣との目線の交錯
これを踏まえてボリュームを調整することで、
敷地の弱点を消し、魅力を引き出す外観がつくれます。
外観デザインは“足し算”よりも“引き算”が大切
外観デザインは、色や柄をたくさん加えていくよりも、
不要な線・不要な凹凸をどれだけ引いて洗練させるかがポイントです。
中村建築研究室では
・法規(斜線・採光・高さ)
・敷地条件
・耐久性
・デザイン性
を統合して、
10年後も「建ててよかった」と思える外観を目指しています。

